社会福祉法人会計における内部取引消去の留意点

社会福祉法人の財務諸表等開示システム(WAM-NET)を使って、北九州市及びその近隣市町村に本部がある社会福祉法人の現況報告書と計算書類にざっと目を通してみました。
約400法人の計算書類を確認したところ、内部取引が消去されていない、もしくは内部取引の消去の仕方が誤っている法人が意外と多いことに驚きました。

内部取引の消去を正確に行うために、まずは内部取引について説明します。

ある拠点区分と他の拠点区分との間で、あるいは同一拠点区分内のあるサービス区分と他のサービス区分との間で、資産のやりとりや役務の提供が行われることがあります。
このような取引を内部取引といいます。
内部取引には、以下の3種類があります。
・事業区分間取引
・拠点区分間取引
・サービス区分間取引
また、内部取引のパターンには、主に以下の4種類があります。
・資金の貸付/借入(例:事業区分間貸付金/同借入金など)
・資金の繰り入れ (例:拠点区分間繰入金費用/同収益など)
・役務の提供(例:事業費/就労支援事業収益など)
・固定資産の移管(例:固定資産移管費用/同収益など)
これらの内部取引は、すべて消去の対象となります。
内部取引を消去しなければ、法人全体の予算規模、経営成績及び財政状態が内部取引の分だけ過大に計算書類に表示されることになってしまいます。

次に、内部取引の消去の仕方について簡単に説明します。
ポイントは、以下の3点です。
・事業区分間取引は、資金収支内訳表、事業活動内訳表及び貸借対照表内訳表のそれぞれの「内部取引消去」欄で消去する
・拠点区分間取引は、事業区分資金収支内訳表、事業区分事業活動内訳表及び事業区分貸借対照表内訳表のそれぞれの「内部取引消去」欄で消去する
・サービス区分間取引は、拠点区分資金収支明細書及び拠点区分事業活動明細書のそれぞれの「内部取引消去」欄で消去する。

このように段階を追って内部取引を消去していくと、次のようなことが言えます。
・法人単位の資金収支計算書、事業活動計算書及び貸借対照表には、内部取引の勘定科目は一切表示されない
・資金収支内訳表、事業活動内訳表及び貸借対照表内訳表には、拠点区分間の内部取引科目(例:拠点区分間繰入金収入/同支出など)とサービス区分間の内部取引科目(例:サービス区分間固定資産移管費用/同収益など)は表示されない
・事業区分の資金収支内訳表、事業活動内訳表及び貸借対照表内訳表には、サービス区分間の内部取引科目は表示されない
・拠点区分資金収支計算書、拠点区分事業活動計算書及び拠点区分貸借対照表には、サービス区分間の内部取引科目は表示されない

従って、計算書類が次のようになっていれば、会計処理を誤っていることになります。
・法人単位の計算書類に、内部取引科目が表示されている
・資金収支内訳表、事業活動内訳表及び貸借対照表内訳表に、拠点区分間の内部取引科目やサービス区分間の内部取引科目が表示されている
・事業区分単位の計算書類に、サービス区分間の内部取引科目が表示されている
・拠点区分資金収支計算書、拠点区分事業活動計算書及び拠点区分貸借対照表に、サービス区分間の内部取引科目が表示されている

内部取引の消去の実務は会計ソフトによって異なります。
内部取引がうまく消去されていない場合は、会計ソフトの設定に不備がないか、会計伝票の入力の仕方に不備がないか確認してみましょう。

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